連載 [連続小説]コロナのない保健所の日記・14
映画館の隣にある保健所
関 なおみ
Naomi SEKI
pp.525-536
発行日 2024年5月15日
Published Date 2024/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401210304
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
四月二日月曜日 エイプリルフールの翌日 晴れ
真歩が意外に感じたのは、異動先が係長級のときにいた大塚保健所だったことだ。公衆衛生医師が以前勤務していた区に再度配属されるということは時々あったが、これまでは、だいたい所長になってから係長のときにいた保健所に戻る、というパターンが多かったのである。昨今公衆衛生医師の数が減るとともに、係長級でいられる期間も短くなる傾向にあり、同じ区でそのまま係長から課長へ昇任することも増えてきていた。
二十三カ所もあるのだから、どうせならなるべく多くの区を制覇してみたいと思っていた真歩としては、少々残念だったが、三年近く勤務し、しょっちゅう自転車で家庭訪問に行っていた、勝手知ったる大塚区なら、どこでも迷わずに行けるから安心だ。しかも、いまだに連絡を取り合っている大塚区の職員も多く、ランチや飲み会に声を掛けたらすぐ集まってくれそうだったので、神田川区のときほどのショックはなかった。
Copyright © 2024, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.