連載 Go to the people——バングラデシュと共に歩んだ私の国際保健50年
第四編
石川 信克
1,2
1公益財団法人結核予防会
2結核予防会結核研究所
pp.1053-1056
発行日 2023年10月15日
Published Date 2023/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401210159
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ネパールからの帰国と結核研究所への入職
将来アジアで働きたい、という願いを胸にネパールから帰ってきた。どこで準備の勉強をしようかと迷ったが、「まず熱帯医学を東大の医科学研究所でやろう」と考え、たまたま帰国されていた岩村先生に相談した。「君、それはやめた方がいい。アジアで働きたいなら、大学の研究室でない方がいい。むしろ結核をやったらどうか。アジアの公衆衛生の手始めと思って結核研究所へ行きなさい」と勧められた。私は熱帯医学も、結核もよく分からなかったので、ネパールで長く働いている岩村先生の言うことを信じて清瀬の結核研究所に入れてもらうことにした。
結核研究所は、結核という病気と人類との長い闘いの中で培われてきた学問の深さと人間味があふれた環境であった。大学と随分違うことは、まず医師たちが偉ぶらず、難しい言葉を使わない。また、研究室的な学問のための学問ではなく、どうしたら日本からこの病気をなくすことができるか、どうやって患者や、人々に分からせることができるかが大切にされていた。患者の治療や、地域の集団検診、BCG接種などに加え、一般の人々への啓発、保健師や現場で働く医師たちへの教育、行政への深い関わりの中で研究がなされていた。
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