連載 衛生行政キーワード・141
ナッジを利用した取り組み
渭原 克仁
1
1厚生労働省健康局がん・疾病対策課
pp.841-844
発行日 2021年12月15日
Published Date 2021/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401209752
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はじめに
わが国において,生涯のうちにがんと診断される確率(累積がん罹患リスク)は2人に1人(男性65.0%,女性50.2%,2018年データ)であり,がんは日本人にとって身近な病気といえる1).また,がんは1981年からわが国の死因の第1位となっており,がんで死亡した国民は376,425人(男性220,339人,女性156,086人,2019年データ),累積がん死亡リスクから推定すると,がんで死亡する確率は男性26.7%(4人に1人),女性17.8%(6人に1人)とされる1).
こうした背景のもと,がんの死亡者の減少を実現するため,第3期がん対策推進基本計画では,「科学的根拠に基づくがん予防・がん検診の充実」を1つの柱として設定し,がんの罹患自体を減らすとともに,国民が利用しやすい検診体制を構築し,がんの早期発見・早期治療を促している2).わが国におけるがん検診の対象としては,いずれも検診による死亡率減少効果が認められている5つのがん(胃がん,子宮頸がん,肺がん,乳がん,大腸がん)を設定しており,それらを「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」(以下,指針)に定めている3).
がんの早期発見は集団のがんによる死亡率減少に寄与するため,がん検診の受診率向上は必要かつ切実な課題である.近年,わが国における受診率は上昇しているが,がん対策推進計画における「がん検診受診率50%」の目標には,ほとんどのがんにおいて,依然として到達していないのが現状である(図1)4).
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