特集 健康的な住まいが欲しい!—暮らしやすくて,寿命も延びる
COVID-19における空調の運用と管理
金 勲
1
1国立保健医療科学院生活環境研究部建築・施設管理研究領域
pp.469-476
発行日 2021年7月15日
Published Date 2021/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401209659
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はじめに
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染経路としての空気伝播(感染)は,部分的かつ限定的に認められているもののまだ議論が続いている.インフルエンザやCOVID-19は飛沫や飛沫核によって感染源が排出されることは明白であるため,感染経路として空気を意識するのは当然であろう.
また,3密回避は流行初期から訴えられ(2020年3月9日)1),この日本の3密回避キャンペーンは海外でも高く評価されWHOによって同年7月からそのまま引用・広報されている2).
インフルエンザは基本的に飛沫,接触感染がメインとされている.COVID-19はこれに加え限定的な環境下での空気感染が認められているが一般的ではなくまれと評価されている.現時点で空調系統による伝搬感染が報告された例はないが3),ダイヤモンドプリンセス号や中国広州のレストラン,韓国のコールセンターの大規模感染事例では空気感染を疑っている声も一部で存在する.そのため,流行初期には還気(return air,レタン)を取る中央式空調が危ないのではないかという臆測や,還気を全部止めて全外気運転をすべきだという現実を知らない話が当たり前のようにいわれたこともあった.
空調の仕組みや特性をよく理解せず,とりあえず換気量を増やすのが最善という盲目的な目先の目標に捉われ無理な運用をすると,室内環境の悪化,騒音,機器トラブルなどさまざまな問題が生じる.
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