投稿・資料
感染症流行時の市民の「責務」や差別の問題を「コロナ条例」から考える
井上 悠輔
1
,
大隈 楽
2
1東京大学医科学研究所公共政策研究分野
2京都大学文学部
pp.347-353
発行日 2021年5月15日
Published Date 2021/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401209627
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はじめに
感染症法1)では「国民の責務」に関する規定がある.すなわち,「国民は,感染症に関する正しい知識を持ち,その予防に必要な注意を払うよう努めるとともに,感染症の患者等の人権が損なわれることがないようにしなければならない.」(第4条)である.これを踏まえつつも,地方自治体において,現在の新型コロナウイルス感染症の流行に接して,住民(都道府県民,市町村民)の役割や責務を独自に規定する条例2)の公布が増えている.条例には,国の明示的委任によるものもあれば,その地域の実情に応じた取り組みを志向するものまで,いくつかの分類が可能である2).新型コロナウイルス感染症のように,各地で多様かつ予測困難な事態を引き起こす状況について,現場に近い自治体による自治立法の展開にも注目すべきであろう.
本稿ではこうした規定の主な内容を整理して紹介し,考察を加えた.
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