映画の時間
—生きることは踊ること.踊ることは生きること.—ホワイト・クロウ 伝説のダンサー
pp.487
発行日 2019年6月15日
Published Date 2019/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401209173
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「ホワイト・クロウ」とは,直訳すれば「白いカラス」です.カラスの集団の中では目立つことから,類いまれなる傑出した人物を意味する場合と,集団のはぐれ者を指す場合とがあります.今月ご紹介する「ホワイト・クロウ」の主人公ヌレエフは実在した天才的バレエダンサーで,ある意味,傑出した人物ですが,はぐれ者的な側面もあり,まさに映画の題名がぴったり当てはまる人物です.
時代は1961年,東西冷戦の真っただ中です.ソビエト連邦時代のKGBでしょうか,ヌレエフが亡命することを知っていたのかと,バレエ教師のプーシキン(レイフ・ファインズ)が厳しく追求されているシーンから映画は始まります.観客は,すでにヌレエフの亡命が成功していることを知ってから,時をさかのぼって彼の半生を追うことになります.一種の倒叙法で,なぜヌレエフは亡命しなければならなかったのかを常に観客は意識することになる,優れた展開だと思います.
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