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はじめに
日本大学人口研究所は2007年にWHO(World Health Organization)から世界で初めて人口,リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康),開発の3分野でWHOコラボレーティング・センターとして認定された.2015年に日本大学経済学部中国・アジア研究センターがその活動を受け継いだが,2018年の名称変更に伴い,日本大学経済学部グローバル社会文化研究センター(以下,当センター)が研究を進めている.
日本大学(以下,当大学)がWHOコラボレーティング・センターとなった背景には,日本大学人口研究所がわが国で唯一の人口問題を扱う大学の附置研究所として1979年に創設されて以来,調査・研究や各種の国際会議の開催などによって学術貢献をしてきたことが評価されてきたことがある.創設者である故 黒田俊夫名誉所長は国連人口賞を獲得し,国際的な人口問題の研究に大きく貢献した.また,専門委員として小川直宏元所長がWHOの「低出生に関する政策パネル」の委員となり,安藤博文元所長がUNDP(United Nations Development Programme:国際連合開発計画),UNFPA(United Nations Population Fund:国際連合人口基金),UNICEF(United Nations Children's Fund:国際連合児童基金),WHO,World Bank(世界銀行)が共同で組織する人類のリプロダクションの研究・開発およびトレーニング関する科学技術諮問グループ〔Scientific and Technical Advisory Group(STAG)〕を歴任するなど,WHOをはじめとする国際機関に大きな貢献をしてきたことが評価されたからである.
かつて,国際的な人口問題は人口爆発が大きな問題であり,貧困とも関係していた.一方,近年の出生率の低下は経済の活力の欠乏を招き,人口構造の変化と人口高齢化を招き,人口爆発と同じような世界的な大問題となりつつある.開発途上国,先進国ともに出生率は低下しており,親子の関係や,10代の妊娠や性行動など,リプロダクティブ・ヘルスの問題を考えなければいけない状況が急務となってきた.人口高齢化は先進諸国のみならず,多くの開発途上国でも深刻な経済・社会的な問題を次々に引き起こしている.このような状況の下,2000年前後からWolfgang Lutzを始めとする世界で著名な人口学者らによって,20世紀は「人口爆発の世紀」であったが,21世紀は「人口高齢化の世紀」になるであろうと言われるようなっている.
上記のような状況において当大学は,これまで人口問題に関して国際的な研究プロジェクトを実施してきた.本稿では,当センターで現在,研究を行っている中で代表的なテーマである出生率低下と,出生率低下による国際的な高齢化に対応する最先端の研究プロジェクトについて述べる.
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