特集 薬剤耐性(AMR)対策
厚生労働省院内感染対策サーベイランス(JANIS)からみたAMR対策の課題と展望
柴山 恵吾
1
1国立感染症研究所細菌第二部
pp.798-803
発行日 2017年10月15日
Published Date 2017/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208754
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国によって実施されている薬剤耐性サーベイランス
「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン2016-2020」1)では,薬剤耐性の動向調査の強化が目標の一つとして掲げられている.薬剤耐性の実態を把握することは,薬剤耐性対策を策定したり,実施した対策の評価を行ったりするのに当たって重要な基本情報になる.わが国には,医療分野の薬剤耐性に関する国の調査として感染症法に基づく感染症発生動向調査(National Epidemiological Surveillance of Infectious Disease:NESID)2)と,厚生労働省院内感染対策サーベイランス(Japan Nosocomial Infections Surveillance:JANIS)3)がある.
NESIDでは,感染症に基づいて医師から届け出られた感染症の報告を集計している.薬剤耐性菌による感染症は5類感染症に分類されており,カルバペネム耐性腸内細菌科細菌,薬剤耐性アシネトバクター,バンコマイシン耐性腸球菌,バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌による感染症は全数把握対象,MRSA(Methicillin-resistant Staphylococcus aureus),ペニシリン耐性肺炎球菌,薬剤耐性緑膿菌による感染症は定点把握対象になっている.いずれも感染症を発症した患者を届け出対象としており,無症状保菌者は対象としていない.NESIDでは,それぞれの薬剤耐性菌による感染症患者の実数を把握したり,感染患者数の推移を把握したりすることができる.
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