映画の時間
—その日,僕らは大人になることを決めた.—ぼくらの家路
桜山 豊夫
pp.725
発行日 2015年10月15日
Published Date 2015/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208287
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児童虐待は,暴力などで身体に危害を加える「身体的虐待」,適切な世話を行わない「ネグレクト」,罵声を浴びせたりする「心理的虐待」,性的な暴行をふるう「性的虐待」に分類されます.今月ご紹介する「ぼくらの家路」の主人公は,このうちの「ネグレクト」の状態にあります.
ベルリンに住む主人公のジャックは10歳の男の子.シングルマザーのザナと,6歳の弟マヌエルとの3人で暮らしています.若い母親ザナは子供を愛してはいるようですが,まだまだ遊びたいお年頃のようで,ジャックとマヌエルを家に残したまま,夜遊びして朝帰りということも日常化しているようです.ジャックは,朝は一人で起きて,弟に朝食の用意をし,学校にかようという,とてもよくできた子供です.しかし,あるとき,風呂の温度調整を忘れたまま,弟を風呂に入れようとし火傷を負わせてしまいます.結果としてベルリンの児童福祉局に保護され,適切な養育がなされていないという判断なのでしょう,10歳のジャックはベルリン郊外の児童養護施設に預けられ,幼いマヌエルは児童福祉局の指導の下で母と生活することになります.
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