発言あり 家庭内の事故
医療人が研究と行動を,他
五十嵐 正紘
1
1北海道厚岸町町立厚岸病院
pp.509-511
発行日 1989年8月15日
Published Date 1989/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207986
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不慮の事故は,生後6ヵ月以前を除いて小児の死因の1位である,多大な努力が傾注されている小児がんによる死亡の3〜4倍の子供が,事故で死亡している.この事実,あるいはこの事実に有効な関与をしていない現状に,小児医療を担当するものとして不甲斐なさを感じる.小児のがんや慢性特定疾患に注ぐ以上の努力を,事故防止と事故による死や傷害対策に,医療従事者や医療行政当局が関心と努力と金を向けてよいと思う.事故に対する研究費が少ない,事故に対する学会や雑誌での研究発表が少ない,また卒前卒後の医療教育に事故関連事項が少ないのも事故医療への関心が薄く,取り組み不足であることを物語っている.
乳幼児期の事故死では,家庭内での事故による死亡が交通事故死よりも多い.全年齢を通じてみても,家庭内の事故死は交通事故死の半分近くにのぼる,老人の家庭内事故死も人口の高齢化に応じて増加の傾向にある.同じ事故の中でも,交通事故に比べて家庭内の事故への取り組みが希薄である点は否めない.交通事故や保育所,幼稚園,学校,職場のような公共の場,集団の場での事故対策から,家庭内事故のような私的な場所での事故対策を重視する「視点の転換」も必要である.
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