保健行政スコープ
思春期の母子保健
関 英一
1
1厚生省児童家庭局母子衛生課
pp.142-143
発行日 1989年2月15日
Published Date 1989/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207880
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●はじめに
思春期は,小児期から成年期への移行期であり,性機能をはじあとする身体面や精神面での発育が急速に進む時期である.児童の健全な育成という観点からすればこの時期は,母子保健対策の成果が総合的に明らかになってくる時期と考えられる一方,健やかな母性という観点からはこの時期は母子保健の出発点として位置づけることができよう.しかしながら,受験や就職を控えてのストレス,性に関する情報の氾濫などがあいまって,思春期の青少年は精神的にも社会的にも不安定な状態におかれており,登校拒否,非行,家庭内暴力といった思春期の青少年の心の問題に起因する社会病理現象が顕在化している.また,思春期女子の妊娠は,思春期保健の最大の問題であると言えよう.10代の妊娠は,衝動的な性行動によることが多いので,望まない妊娠の頻度が高いと言われるし,高校生などが妊娠すると学業が続けられなくなり生活の荒廃を招くこともしばしばである.欧米諸国に比べればわが国では10代の妊娠の数は多くはないと言われるものの,ひとたび妊娠してしまうと社会から疎外されやすく,助けを求める場も少ないため,深刻な問題を投げかけている.表に人口動態統計による10代の出産と優生保護統計による人工妊娠中絶の近年の動向を示した.
予防から治療,リハビリまでという総合的な保健医療サービスの図式を10代の望まざる妊娠の問題に当てはめて考えてみると,次のような一連のサービスが想起される.
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