特集 公衆衛生と危機管理
53年福岡大渇水とその後の対策
三角 寛治
1
Hiroharu MISUMI
1
1福岡市総務局
pp.108-112
発行日 1988年2月15日
Published Date 1988/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207620
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■はじめに
市民生活や都市活動をするうえで,水道の蛇口をひねればいつでもすぐに水が出るという,ごくあたりまえのことがままならなかったのが,昭和53年の福岡大渇水であった.それは水を確保するための百万人を越える福岡市民の前代未聞の戦いであり,実に287日にも及ぶものであった.今では渇水の発生時や水に関する書き出し文章のたびに,必ずといっていいほど引合いや枕詞として登場してくるほどの,実に厳しく貴重な体験でもあった.5月20日から始まった制限給水の中でも6月2日には,決められた5時間の給水時間帯に一滴の水さえも蛇口から出なかった世帯が4万5千世帯にも及ぶ大混乱であった.この状態が6月10日まで続いた.
その後,一時水源は回復したものの,早々の梅雨明け宣言により再び制限給水が強化されて,百万人を越える市民が,真夏日や熱帯夜の続く乾ききった福岡砂漠のなかで,くる日もくる日もひたすら雨を待ち,制限給水の下で不自由をしのいでいった.秋が過ぎ,さらに年が明けてからも福岡市民の窮水生活は続き,やっと3月25日に終止符を打った.この異常渇水は大変な災害であったと同時に,市民や行政に対して,水の貴重さと福岡市を取り巻く水問題の厳しさを真剣に問い直させる契機にもなった.
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