特集 休養の科学
現代人の生活時間
斎藤 賢治
1
Kenji SAITO
1
1NHK放送文化調査研究所
pp.302-306
発行日 1987年5月15日
Published Date 1987/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207461
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■はじめに—夜型消費社会の到来か
東京・銀座の百貨店が,昨年(昭和61年)9月から,閉店時間を6時から7時に延長した.働く女性を中心に,この閉店時間の延長は,ゆっくり買い物ができると好評のようだ.もっとも,百貨店側では,時間延長に伴うコストの増で,それを上回る利益が上がらないと,と慎重な構えのようであるし,従業員の間でも,労働時間短縮の趨勢に逆行と,必ずしも評判はよくない.しかし百貨店の閉店時間延長は,夜型消費社会の到来とマスコミの注目を集めた.
24時間制のコンビニエンス・ストアをはじめ,拾いあげてゆくと結構深夜営業をしている業種もあるようだが,その最先端の一例は,オールナイトのテニスだろう.東京・品川のあるホテルが三年ほど前に始めたものだが,若い人の間に口コミで広がり,金曜日の夜などは,早めに予約しないとコートがとれないという.もてあますエネルギー,それでいて運動不足.これを解消するのに深夜のテニスがもってこいというのでは,いささか社会病理の匂いがないでもない.しかし演劇関係での開演時間の繰り下げには,やや大人の文化の匂いがある.会社をひけてから,ゆっくり食事をとり,そしてお芝居を見てから,お酒を飲んで帰るといえば,なんだか"フルコース"の感があるが,芝居の余韻にアルコールが入っての楽しい会話となれば,まさしく大人の夜の文化というものだ.
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