衛生公衆衛生学史こぼれ話
31.飲み水三代
北 博正
1
1東京都環境科学研究所
pp.604
発行日 1986年9月15日
Published Date 1986/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207329
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今世紀の初期に米国コロラド州の一部の地区に前歯のエナメル質が欠損し,その部が汚い褐色斑を呈する住民が集団的に居住していることが発見され,マッケー(McKay, F. S.)らによって1916年に学会に報告され,このような歯牙異常を斑状歯(mottled teethまたはmottled enamel)と命名された.
当然,この病因を明らかにするため,疫学的調査が行われたが,遺伝病,風士病,伝染病,栄養障害等等,考えられるような病因はすべて否定されたが,最後に残ったのは,患者はある特定の共用井戸の水を飲用に供しているということであった.そこで井戸水の分析が精力的に行われたが,斑状歯と結びつくような結果は何も出なかった.これは当時の分析技術ではつかまえることができなかったからで,その後,微量分析の進歩により,原因として水中のふっ素イオン(F')量が斑状歯のみられない他の地区にくらべ異常に多く,他の斑状歯多発地区でも同様であることがわかった.
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