特集 へき地・離島の保健・医療
離島の栄養問題—山形県酒田市飛島を例として
森 雅央
1,2
Masao MORI
1,2
1食糧学院
2食糧学院東京調理師専門学校
pp.556-562
発行日 1986年8月15日
Published Date 1986/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207318
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■はじめに
山形県の唯一の離島は飛島である.この島はそこに住むことを宿命づけられている定住者,もしくは短期間の生活を営む移住者,さらには観光を主目的として来島する人など,「人」と「島」との結びつきのある島のことで,いわゆる地理学的な意味での離島ではない.「飛島」の持つ条件は社会的にも,文化人類学的にも,また生態学的にも,さまざまな課題をかかえている.筆者はその点を「公衆栄養学」ことにコミュニティの機能としてどう展開されているかということについて,25年余りにわたって問い続けてきた.この調査の軸になるものは,島の人々の「食」の行動であった.「島」の人々の「なりわい」「住まい」など「くらし」の問題は,離島ならではの「生活学」の課題ともなる.
すなわち「島」は海によって囲まれていることから,ややもすれば,外部との交通の困難性だけが浮かび上がってくる.こうした困難性や途絶性は島を孤立化させ,隔絶性が増せば自給生活が強制される.そのために社会は停滞し,伝統的生活文化が根強く残っている例が多い.しばしば離島が「隠された土地」と考えられ,俗にいう「秘島」ブームをひき起こす.従って訪れる観光客の心理には生活文化の本質を探求することではなく,隔絶性から来る閉鎖的な人間関係や自然環境を垣間見ようという好奇心が先行し,ひいては島の後進性という一般通念で島をみつめがちである.
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