特集 障害者歯科
地域の中の障害者歯科医療
緒方 克也
1
Katsuya OGATA
1
1緒方小児歯科医院
pp.601-606
発行日 1985年9月15日
Published Date 1985/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207108
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■はじめに
障害者の歯科医療の問題が取り上げられ,学術集会が開かれ,地方の歯科医師会が地方自治体と一緒に取り組み,歯学教育の一部に組み入れられ,スタディグループのテーマにも上げられるようになったのは,1981年の国際障害者年がきっかけであった.以来まる5年を経た.しかし,地域の中の障害者歯科医療の問題が解決したとは言いがたい.むしろ地域格差が歴然とした感さえある.全体としては歪な進歩ともいえるが,ともかく何かの形を持って進歩をしてきた.そして,他の全てがそうであるように,この間題においても,次々に新しい難問と直面してきた.
障害者にとって地域とは生活のほとんどである.従って,歯科的に何らかの問題,すなわち疾病が発生すると,まず地域の歯科医院で解決をしようとするのが通常である.ところが,現実として障害者の持つ歯科疾患に十分に対処出来る地域の歯科医療機関はほとんどない.その原因は,地域の歯科医師や診療スタッフが障害者についての知識,情報に乏しく,また,治療のための設備やマンパワーも十分でないことにある。さらにほとんどの地域行政が,障害者福祉の中の歯科的問題,特にその管理についての重要さに気づいておらず,従って何の対策も講じていないことも原因の一つである.これらの事が,今後一気に解決するとは考えられないが,開業歯科医院として地域の中で障害者歯科医療に携わっている立場から,若干の意見を述べたい.
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