特集 公衆栄養のストラテジー
世界各国における公衆栄養
鈴江 緑衣郎
1
Ryokuero Suzue
1
1国立栄養研究所
pp.113-119
発行日 1983年2月15日
Published Date 1983/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206654
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栄養問題は世界各国に存在する大きな問題である.しかしその型は異なっていて,先進国では過剰栄養やアンバランス栄養による成人病,ことに循環器疾患が大きな社会問題となっているのに反し,発展途上国においてはクワシオルコール,マラスムス,貧血などの低栄養が大きな社会問題であり,世界の一部では飢饉のような状態までいまだに存在している有様である.その理由は,赤道直下の飢饉帯,すなわち中部アフリカやインド,ボリビアなどは食糧の生産量,配分方法,輸入量,保存法などのいろいろの問題点のほかに,栄養教育や栄養訓練の不徹底も大きな問題となっている.低い経済力や不満足な衛生状態は低栄養の状態をさらに悪化させ,ことに発育期の乳幼児や老人にその影響が強くあらわれている.低栄養により起こる下痢や免疫力の低下もアフリカやインドで大きな問題となっている.そこで本文においては,最初世界の人口動態,食糧需給問題,所要量について述べ,栄養が不足している地域における諸問題,過剰気味の各国における栄養問題ことに各国の栄養摂取目標(ダイエタリーゴール)について紹介し,最後にこれらの栄養問題を最も効果的に解決するための,世界各国における栄養士制度,栄養教育,栄養研究について述べてみることとする.
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