特集 コミュニティ・スポーツ
ハイリスク・グループに対する身体トレーニングについて
紅露 恒男
1
KŌRO, Tsuneo
1
1筑波大学運動処方研究特別プロジェクト
pp.681-689
発行日 1980年10月15日
Published Date 1980/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206168
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■はじめに
近年とみに健康に対する価値観が高まり,比較的に経済的にも困難の少なくなった社会の中で,元来《遊び》の要素を持つスポーツが《健康増進》なる正当化の根拠を得て,すっかり市民権を獲得してしまったようにみえる.これはまた一方,物質的に満たされてきたわが国での,食餌の過剰摂取,それに反比例するかのような機械化による生活様式の変革が,ますます人を身体活動の必要性から遠ざけ,いわゆる文明病なる範疇に属する疾病(subclinicalを含む)を増加せしめたことに対する一種の《自然への回帰運動》の様相をも有しているようにみえる.
ともあれ,農耕・狩猟の時代においてと大きな相異もない形態と機能を備えた人類が急速に身体的活動を減らしていけば,身体活動を支える主柱である循環系の機能は一種の廃用性退化に追いこまれて,緊急の需要に十分対応するのに困難をきたす事態を招き得る.このような危険は,高齢者であれば経年変化による身体機能容量の減少として不可避的現象ともいえるが,近年は上記の理由にもより,いわゆる中年についてもすでにこの種の危険の内在する群が問題となってきている.
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