特集 第19回社会医学研究会総会記録
シンポジウム
公害・薬害・有害食品等健康被害者の医療援護・復権をめぐる諸問題
東田 敏夫
1
,
山下 節義
2
1関西医科大学・公衆衛生
2京都大学・公衆衛生
pp.755-764
発行日 1978年12月15日
Published Date 1978/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205727
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これまでの企業優先・人権軽視の政策の展開のもとで続出した,大気汚染被害,水俣病,森永ミルク中毒,カネミ油症,スモンなどさまざまな公害,有害食品,薬害によって,数多くの健康被害者が生み出され,いまなお身体的苦痛,精神的苦悩,さらには家族ぐるみの生活破壊など,深刻な様相を呈している.これら被害者の復権,補償,医療援護への取り組みは,たとえ裁判に"勝訴"しても,依然として打開されず,なお多くの問題をかかえ,未解決のままである.
もともと,健康被害者の復権と償いには,「加害者完全負担の原則」はもちろんのこと,「原状回復の原則」が貫徹されねばならない.すなわち「元の身体に返す」こと,「人間らしく生きる権利を取り戻す」こと,少なくともそれにふさわしい,可能な限りの医療援護と生活保障が,「被害者優先の原則」によって,生涯にわたって保証されなければならないはずである.それは,被害者らの侵された健康権,生活権,幸福追求権を取り戻すために必要・不可欠な要件であり,低水準の現行社会保障制度によって代替し得るものではなかろう.
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