特集 防災と公衆衛生
ビル火災の実態と防止策
高野 公男
1
1manu都市建築研究所,干葉大工学部
pp.717-724
発行日 1978年11月15日
Published Date 1978/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205715
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はじめに
建物は,人間がその生存と生活の遂行のために自らがつくりあげた生活環境機構であり,空間のシステムである.この立体的に組織化,機構化された空間体系は,われわれの生活展開に多くの可能性を与え,またそれを実現化している.ビルはその中でも最も複雑で,機構学的な生活空間の形態であり,人工環境である.われわれはこの空間機構を利用するためのさまざまな生活形態や活動形態を持っている.このような環境に生活するようになって歴史は浅いが,そこにはすでに多くの人間の活動やさまざまな生活の集積がある.
火災は燃焼という自然界に生ずる理学的現象の形態であるが,これがわれわれの生活に影響を及ぼす時にこのような規定が行なわれる.火災はさまざまな要因により生起し,空間に挙動する.人間はこの火災の時系列的展開に対応して消火や避難などの行動をとるが,しばしばこの火災との抗争やその破壊作用からの逃避に失敗し,物的損害の拡大や人的被害の発生を余儀なくされる.そこでより効果的な防止策の創出が求められる.
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