特集 ビル・地下街—新しいコミュニティー
地下街の安全対策—特に火災
前田 博
1
1東京医歯大・公衆衛生
pp.543-545
発行日 1968年12月15日
Published Date 1968/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203791
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新建材やプラスチックの燃焼
一般的には,木造建築が火災を起こした場合,一度にパッと燃えあがるので,被災者はびっくりして,まさに着のみ着のままで逃げ出してしまうのを常としている。これに反して,新建材や耐火処理を行なった資材を使用してある場合,火事といってもパッとは燃えあがらない。煙を放出してくすぶる時間が長いといわれている。したがって被災者はあまりあわてず,また燃えないという自信もあって,ゆうゆうとかまえて物を持出したり,余計なことをする。その内に,フラッシュ・オーバーによって,パッと燃えあがり,大量の煙によって逃げるに逃げられなくなってしまう。最近のビル火災では,火をかぶりもしないのに死亡したり,当然,逃げられたはずのものが死亡する例がかなりあるということである。
新建材やプラスチックの燃焼,あるいは熱分解によって,大量の煙の発生に伴って,有毒ガスの発生がしばしば問題にされている。本年の8月22日の朝日新聞に,阪大の福井講師らが,合成樹脂が燃焼する際に発生する青酸ガスを問題とし,火災による死亡原因の1つに青酸中毒が想定されることを示唆した記事が掲載されていた。
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