特集 地域歯科衛生
保健所と地域歯科衛生
藤沢 好成
1
,
安陪 和子
2
1大阪府八尾保健所
2八尾保健所
pp.177-183
発行日 1976年3月15日
Published Date 1976/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205148
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歯科医師の保険診療の拒否(?)と差額に対する金銭上のトラブルが社会の注目を浴び,新聞やテレビを賑わすことになった.この根本的な原因を考えてみると,これは歯科医療の需要・供給のバランスの崩れによって起こったものであり.その原因の第1に,国や地方自治体の責任で行われるべき歯科疾患予防対策の不徹底が指摘1)されている.わが国の乳幼児や学童に対する口腔衛生対策は,欧米諸国と比べ著しく遅れており,これに食生活の改変が加わって,乳幼児・小児のう蝕罹患率の未曽有の激増を来たした大きな原因となっている.
乳歯う蝕の実態は,6年ごとに全国的に行われている厚生省歯科疾患実態調査の成績2)が明らかにこれを証明している(表1,2).この調査成績から,乳歯のう蝕は,われわれの食生活がよくなるにつれて,う蝕罹患率の上昇とう蝕罹患年齢の低下傾向が明らかに認められている.また,3歳までの乳幼児のう歯は,母親を困らせるだけでなく,歯科医も治療に手こずる場合が多く,治療せずに放置されがちである.表2の処置歯数をみても,幼児では処置歯率が1割にも達していないことが,この関係を明らかに物語っており,幼児の健康を阻害する要因になっている.
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