特集 歯と健康
幼児の歯を大切に
山下 浩
1
1東京医科歯科大学小児歯科学
pp.329-334
発行日 1974年6月15日
Published Date 1974/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204855
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
小児に関する最近の衛生統計をみると,かつて重大課題であった寄生虫病やトラホームの罹患率が非常に低下していて,ここ20年あまりの関係者達の努力の跡がうかがえるが,ただ一つ戦前戦後を通じて相変らずの高率を示しているのが,小児のむし歯罹患率である.特に最近注目すべき問題として,低年齢の幼児の罹患率が高くなっていく傾向があることで,今日3歳児ではそれが80%に近くなりつつある.このように乳歯のむし歯が早期から多発する理由については,現在の社会情勢や小児のおかれている生活環境から考えて,いろいろな問題がからんでいることは避けられない事実ではあるが,根本的にはむし歯の原因が複雑多岐にわたっているため,適切な予防法が確立していないことである.そのために現在考えられる唯一の対策としては,乳幼児期から学童期にかけての口腔衛生的管理を徹底的に行なうと同時に,それでも発生するむし歯に対しては,早期発見と早期治療で対処していく以外に方法がないといっても過言ではない.
他方小児のむし歯,特に乳歯のむし歯に対する家庭的意識や社会的関心は,毎日の臨床の実態から推察すると,はなはだ低いといわざるをえないのが今日の実情であり,その対策の模索に苦しんでいるのが臨床医の毎日の姿なのである.
Copyright © 1974, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.