発言あり
耐乏生活
I
,
A
,
M
,
O
,
K
pp.133-135
発行日 1974年3月15日
Published Date 1974/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204811
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これからも険しい道へ
石油危機にともない高度成長から安定成長が要求され,耐乏生活が強調される昨今である.戦中,戦後の耐乏生活を強いられた私にとって,このことが公衆衛生を20年前に逆もどりさせるとは考えられない.20数年の間に国民生活も変化し,耐乏生活を強いられたとしても,石油ストーブやプロパンガスのない都市生活は既になりたたないまでに社会は変化している.
20数年前流行した急性伝染病に代わり,経済発展の影に各種公害病が注目をあびている.有機水銀による水俣病,カドニウムによる "いたいいたい病",PCBによる油症患者,砒素ミルクによる中毒の後遺症,大気汚染による "ぜんそく",キノホルムによるスモン,サリドマイドによる胎児の奇型等近代社会がもたらした新らしい疾病の発生に対し,公衆衛生は何の寄与をしたであろうか.不測の事態を予測しこれらの疾病を予防することは公衆衛生従事者によって不可能だった場合もあろう.あやまちは二度としてはならない.またこれらの犠牲者に対しての社会的保障制度の確立は公衆衛生の一分野であろう.健康な人等の耐乏生活は要求されたとしても,これら公害病患者の救済を中止するわけにはいかない.
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