特集 住宅と健康
第8回社会医学研究会・主題報告と総括討議
主題報告Ⅲ
居住環境と健康
報告1.東京都における公害問題
南雲 清
1
1東京都代々木病院
pp.644-646
発行日 1967年11月15日
Published Date 1967/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203570
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1.区部(23区)の住宅問題
都内の住宅環境が悪化した原因の一つは,戦後20年間に住宅に対する環境規準が放置され,正しい指導がなされなかったことにある。この結果,敷地や住宅の規模に制限がなく,住宅は細分化され,不良住宅や住宅のスラム化となり,人口密度は上昇する一方で,42年1月で,1km2/15,084人と世界大都市のなかで第1位である。さらに木造アパートの増築は密集化を招き,通風の悪化,日照時間の短縮は騒音,大気汚染と重なって局地公害をおこしている。40年7月開設された都民相談室での4カ月間に約35,000件の相談件数のうち,住宅問題が60%を占め,世論調査で「住宅に困っている」が41年に42%あった。
23区内で7.4m2(4帖半)/1人以下の住宅に住んでいる世帯が約64万(27%),老朽住宅,狭小過密住宅に住む世帯が75万8千(35%)ある。その区別では,大田,板橋,北の順で,都の北・東方面が過密地帯である。また荒川・墨田・江東・江戸川・足立・葛飾の各区は,地盤沈下と密集化のため,火災・天災の危険地帯とされ,江東区深川塩崎町の密集地域で120世帯・340人の火災被書はこの典型である。都内にはこのような「危険地域」が128カ所存在していると推定される。
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