特集 変貌する農村の社会医学的研究—第6回社会医学研究会・主題報告と総括討議
総括報告と討議
東田 敏夫
1
,
前田 信雄
2
1関西医科大学・衛生学
2東北大学・病院管理学
pp.664-667
発行日 1965年11月15日
Published Date 1965/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203154
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はじめに
近年,日本経済の高度成長は,国民生活の平準化あるいは少産・少死の「人口革命」がうたわれているが,その実は,独占段階における重化学工業の育成拡大を主調としたものであり,そのかげには,農林漁業をはじめ土着産業の開発がおくれ,かえって国民の所得格差は増大し,とくに農民層の転落がめだっており,農山村・僻地における不健康と医療保健サービスの停滞がつづいている。この現実にあって,農村人口構成と農民生活の変貌を追求し,また農村における保健医療活動の実相をたずね,そのあり方を検討することは,当面の社会医学的課題であり,「変貌する農村の社会医学的研究」を本研究会の主題とされたことは,当然であった。
まず京都大学経済学部山岡亮一教授より「変貌する農村の実態」についての発題講演により,われわれの研究討議に必要な予備知識と方向づけが与えられた。すなわち,今日の独占段階における日本農業の位置づけと高度経済成長政策下における農業発展のたちおくれについて,わかりやすく,しかも理論的な解明を得た。第一次産業と第二次,策三次産業との格差は増大し,農業専業によって農民の生活は保証されず,必然的に,日本の農業は農業労働の過密集約化,農村有効労働力の出稼ぎ,通勤兼業,または農家主婦の家内職下請などのパターンをとることを余儀なくされ,農村人口は女性化,老齢化し,農家構造は崩壊の過程にある。
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