特集 綜合保健活動と保健従事者
綜合保健活動と公衆衛生院
曽田 長宗
1
1国立公衆衛生院
pp.438-442
発行日 1965年8月15日
Published Date 1965/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203085
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■治療と予防との分化および統合
国際的問題として
治療医学は古くからあったが,予防医学は極めて近代に到ってからの所産だ,とよくいわれるが予防的思想は治療の医学とともにその淵源が遠く人類未開の時代にまでさかのぼる。神の怒りを解き,悪霊や邪鬼の退散を図って,祭事やまじないを行うことは,すでに発生した悪疫や傷病の治療をのぞむだけでなく,このような疫病の侵襲を防こうとするものであって,あえて治療と予防との目的が分離,分割されていなかった。古人が,各戸に祭ったり,各人のはだ身に付けたりした,護符,お守りの類にも,予防の思想が多分に盛りこまれている。
ただその方法が,未開の時代や,合理的精神にもとづく近代科学の発達しない時代にあっては,荒唐無稽で,その効果にも十分期待できるものがなかった。傷病治療のための草根木皮の利用や錬丹の術と共に,不老長寿,強精の薬物も探し求められたが,効果的な方法や物品は長い間容易に出現しなかった。
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