特集 衛生害虫駆除
衛生害虫駆除の国際的動向—特にマラリア根絶作業に関連して
森下 薫
1
1大阪大学
pp.349-355
発行日 1964年7月15日
Published Date 1964/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202836
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まえがき
公衆衛生上衛生害虫のもつ最も重要な意義は,それが種々な病原生物を伝播するにあることは何人も否まないところであろう。勿論それ以外の意義を全然無視するのではないが,重要性からは大きい格差がある。即ち衛生害虫の病原伝播者vectorとしての意義が特に重要視される。vectorに依り伝播される疾病には種々なものがあり,そのうちvectorと病原生物との間に特異関係のあるもの,即ち生物学的伝播biological or cyclic transmissionに依る場合に非常に重要なものが含まれており,かつそれには国際的な重要性をもつものが少なくない。マラリア,黄熱,トリパノソーマ病,リーシュマニア病,フィラリア病などがこの範疇に属し,何れも地方病性に存在するのを原則とするが,それを基盤として流行性発生を起こすことのあるのを制徴とする。さらにこれらには特定の大陸内で,或いは殆んど全世界に亘って蔓延し或いはその可能性のあるものが含まれているので,その研究及び対策は1地1国の手で実施するのでは充分でなく,どうしても国際的な方法に依る協力が必要となって来る。そのため各種の機関が活動しているが,その中心的なものとして最も有力な機関はWHOであると云えよう。
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