〈検査室メモ〉
衛生害虫の駆除法
鈴木 猛
1
1東京大学伝染病研究所寄生虫研究部
pp.499-503
発行日 1960年8月15日
Published Date 1960/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542905735
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衛生害虫とその害
人の衛生に害を与える昆虫及びダニを総称して衛生害虫と呼んでいる。したがつて,この中には,ハエ,蚊,ゴキブリ,ノミ,シラミ,ナンキンムシ,イエダニ,ブユ,アブ,ヌカカ,恙虫,コナダニ,毒蛾など,動物分類学からみれば,広い範囲の目や科に属する「虫」が含まれる。
そしてこれらの害虫のもたらす害も,3つぐらいに大別される。その1は,疾病を媒介し,あるいは疾病をひきおこす害である。たとえば,シラミが発疹チフスを媒介し,ノミが発疹熱を媒介し,蚊がマラリア,日本脳炎,フイラリアの伝播に一役買い,ハエが赤痢菌などを運び,また恙虫病は恙虫に刺されることによつておこり,コナダニ,毒蛾はそれぞれ人体内ダニ症と皮膚炎の原因になる。このような害は,医学的にみてもつとも重要である。そして,疾病予防ないし撲滅のために行われる害虫駆除は,Vector control(媒介者駆除)と呼ばれている。台湾をはじめ,東南アジアの諸国でDDTの屋内残留噴霧によつてハマダラカを駆除し,これによつてマラリア撲滅に成功したのは,Vector controlの典型的な例である。日本でも,奄美大島,九州の離島,四国の西南部などで,フイラリア撲滅のためのアカイエカ駆除が,大がかりな実験的規模で進められている。
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