文献
公衆衛生に関連をもつ住宅問題におよぼす人口分散の効果/看護施設の衛生学的規準とその指導
芦沢
pp.26,50
発行日 1961年1月15日
Published Date 1961/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202365
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1940年頃からヨーロッパ諸国の出生率は意外にも立直りを示し,カナダ,アメリカ合衆国も同じ動向をみせた。カナダにおける人口の都市集中は甚しく,年々の出産の3割近くはオンタリオ州1州でしめている。カナダの人口はこの28年間に7割増加し,1958年1,700万であるが,出生,移入の高率に支えられ,1975年には2,420万になると推定される。しかも現在カナダ人口の1/3はオンタリオ州がもち,さらにオ州人口の1/4はトロント市に集中している。人口の過度の都市集中のへい害を除くため,集中を抑える法的な規制がどうしても必要となる。都市の空地をむやみに宅地にしないような措置がとられねばならない。人口の地方分散によつてはしかし担税力の低い層がより多く残るため,古ビルの取りこわし,区画整理などに要する市の財政を苦しいものにするという矛盾がある。古くから住みついていて,財政上の負担をしてきた一部上流階級の人の中にはあくまでも,自分の邸宅にしがみついて分散をがえんじえない人もでてきて,低所得層のスラムと高所得層の一種のスラムが併存するという現象がトロント市内でも起つている。
住宅地の改善はしかし大都市低所得者層の消費需要をかえ,たかまつた消費欲求は既婚婦人を職場にかりたて,これまでの北アメリカの生活の典型とはおよそ異常なスタイルが生れようし,それが改性,宗教に対する態度の変容ともなるであろう。
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