原著
外来診療所における赤痢の実態—特に軽症赤痢患者について
川上 武
1
,
加藤 毅
2
,
小熊 トシ子
3
1久我山病院
2上井草診療所
3若宮診療所
pp.275-280
発行日 1959年4月15日
Published Date 1959/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202130
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はしがき
化学療法剤,抗生物質の出現と公衆衛生施設の普及により,急性伝染病の激減した今日でも,赤痢は年々10万人前後の患者が届出されており,届出伝染病患者数の半分を越している実情である。
従つて,赤痢が予防機関における防疫対策の大問題の1つであるのはいうまでもないが,日常赤痢患者に第1線で接している臨床家にとつても,その動向について正しい見解をもつことが必要になりつつある。ところが赤痢治療薬の急速な進歩は,赤痢の病像に大きな変化を及ぼし,臨床家の赤痢についての考え方と,現行の赤痢届出制度との間には大きな溝ができてきたように思われる。両者の溝を埋めるには,予防機関の働きの大切なのは勿論であるが,治療機関の立場より,赤痢の実態と病像を調査して解明することが更に必要である。この仕事はまた厚生省が昭和28年に行つた赤痢実態調査(特にその中で,下痢患者と赤痢菌既陽性との関係)を側面より検証するという性質をもつ筈である。
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