綜説
猩紅熱トキソイドについて
沢井 芳男
1,2
1東大
2伝染病研究所
pp.35-40
発行日 1956年10月15日
Published Date 1956/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201737
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まえがき
ジフテリアと同様に猩紅熱をトキソイドで免疫予防しようという考えが生れたのは,1923年にDick1)夫妻が猩紅熱の患者材料をヒトに接種して実験的に感染症をつくることに成功して以来のことである。ついで同氏等は患者から分離されたレンサ球菌が猩紅熱様の発疹を作るいわゆる外毒素を生産すること,さらにまた培養の濾液からえた毒素(ジツク毒素)でジフテリアのシツクテストと同様に皮膚反応を行うと,猩紅熱に対する感受性をテストすることができることなどを明らかにした。すなわちジツクテスト(Dick test)がこれである。
この様にしてジツクテストを手がかりとして,上述の毒素を用いて猩紅熱の能働免疫が行われるようになつたが2),本毒素はジフテリア毒素にくらべると,ヒトに対する毒作用ははるかに弱いが,それでも毒素をそのまま免疫に用いるといろいろな不快な副作用とくに猩紅熱様の発疹ができたり,あるいはまた軽い猩紅熱になることもあるので,ジフテリアトキソイドと同様にホルマリンでトキソイド化しようとする試みが多くの研究者によつて行われるようになつた3)4)5)。
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