第5回綜合医学賞入選論文
睡眠と日内変動
田多井 吉之介
1
1国立公衆衛生院生理衛生学部
pp.21-35
発行日 1955年10月15日
Published Date 1955/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201604
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ヒトの日常生活は,活動と休養の織りなすモザイク模様であつて,正常の生活態度は昼間活動して夜間に睡眠という休養を行うのであるが,これには多数の例外がある。例えば乳兒の睡眠は成人と非常に異るし,また成人であつても,夜間作業を必要とする特殊の職業につくと,生活のリズムを乱す型の睡眠をとらざるをえない。ヒトの健康生活に休養がいかに大切であるかは,改めてここに論ずるまでもないが,休養のうちでも最も重要な睡眠の研究は,ややもすれば忘れられがちである。睡眠の科学に関する成書がいかに少いかは,この事実を証明してあまりあると思われる。ここに著者が,あえて睡眠に関する問題を論じようとする理由がある。
ひるがえつて,活動と休養に伴つて生理的に生ずる生体内のリズムの研究もまた,実際的な面からみると非常に大切であるが,これを主題とした報告は比較的わずかである。例えば生体に関する測値が,24時間のどの時刻に,生体のどのような活動と休養のリズムの中にえられたかという記録は,基礎および臨床のあらゆる研究に不可欠であるのに,とかく軽視されがちなために,誤つた結論が導きだされるおそれさえある。著者がここに睡眠の問題を考究すると同時に,これと関係の深い日内変動に関する諸問題をとりあげた目的の1つは,この日内変動という生理的リズムを考慮すべき重要性を強調するためである。
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