研究報告
パラチオン中毒の應急檢査に使用できる簡便血清コリンエステラーゼ定量法(第一報)
椎木 悌二
1
,
大久保 達雄
1
,
高橋 浩
2
1富士化学工業株式会社
2山口医大臨床病理学教室
pp.61-67
発行日 1955年6月15日
Published Date 1955/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201571
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パラチオン(及びその類似製剤)中毒の診断は血清コリンエステラーゼ(ChE)や血清SH基の定量及び尿(又は血液)からの製剤またはその分解産物たるパラニトロフエノールの検出をまつてはじめて確定する。なかでも血清ChEはパラチオンに対して極めて鋭敏に反応し活度低下を来すから,その測定はパラチオン中毒診断における最も重要な検査と見做されている。血清ChE定量法としては色々な方法が発表されているが,多くはWarburg装置,ガラス電極pHメーター及び光電比色計など小さな実験室では購入しにくい高価な器具を使用しなければならない。
ここに発表するChE定量法はもともと肝疾患における血清ChE低下を検出する目的で案出され,既に1600例以上の患者血清を処理した歴史を持つている。その原理はマイケル法及び厚生省が標準法として認定している上田氏の方法と同様に,血清(血漿)を混じたアセチルコリン基質緩衝液のpHが血清のChEによるアセチルコリン分解(醋酸産生)の進行につれて降下するのを測定し,このpH降下の強さを以つてChE活度を代表さす(pHの降下が顕著な血清ChE活度は不明瞭な血清のそれより大きいと判定する)のである。基質緩衝液のpHはフエノールレツドを指示藥としコンパレーターで出来るだけ精密に読取る。
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