特集 最近の寄生虫問題
汎太平洋結核会議に出席して
高部 益男
1
1厚生省
pp.8-11
発行日 1953年7月15日
Published Date 1953/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201235
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去る4月10日の夜行で羽田を出発して,13日から19日までまる1週間フィリピンのマニラ市で開かれた汎太平洋結核会議に出席して,21日の夕刻帰京した。わずか11日間のことではあつたが,心理的にはかなりの旅行をしたように覚える。冬着でも肌寒く感ぜられた東京から出て,一夜過ぎれば,流汗淋漓のマニラで食物なども隔りが多いので,生理的に馴致する暇がないこと,国際的な雰囲気には相当馴れているつもりであつたが,太平洋に散在する国々から代表が集まつていたので,東京や米国などの体験のみでは,その集団の心理的構成の分析には不十分であり,またマニラ市民の日本人あるいは日本に対する感情というものが特殊な状態に置かれていることなどがその主な原因であると考える。幸にも,日本医師会から会長の田宮先生がオブザーバーとして参加せられたのと,去年東京で開かれたWHO(世界保健機構)の西太平洋地域統計ゼミナールに出席した数名のフィリピン代表と顔見知であり,又ハーバードの同級生が今度の結核会議の枢要な地位を占めていたことなどが,出発前の心理的緊張を緩和するのに役立ち,又事実現地に於いても大変に援助を受けたのである。
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