原著
BCGの人體接種によるKoch現象に就て
大八木 重郎
1
1東都都立四谷保健所
pp.290-298
発行日 1948年4月25日
Published Date 1948/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200277
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緒言
1891年Robert Kochが發表した次の如き事柄が後日人々によつてKoch現象,或はKochの基礎實驗と稱へられ結核アレルギー乃至結核免疫の一表現として重要な事柄となつて來た。即ち未だ結核に感染せざる健康天竺鼠の皮膚に結核菌の純培養を接種しても直ぐ接種創は閉鎖し,數日位で一應治癒した様に見えるが,10日乃至2週間を經て,漸やく硬結を作り始め,間もなく破れて潰瘍を形成する。そしてその天竺鼠が全身結核で斃れる迄その潰瘍は治らずに終る。一方既に結核に罹かつた天竺鼠に同様結核菌を接種すれば,上記の場合と全く違つた關係を示し,就中4-6週位前に豫め充分なる量を接種した動物が最も都合良いが,斯様な動物に再接種すれば,接種創は直ちに閉鎖するが,一定の時日を經ることなく,接種翌日即ち接種後第2日目に既に特異なる局所反應を現はし硬結を觸れ,暗赤色を呈し,それが接種個所の周圍0.5-1cmの範圍に擴がる.なお續いて2, 3日は益々著明となり,遂にその部の皮膚は壊死に陷り脱落し,扁平なる潰瘍を形成する。併し通常その潰瘍は速かに且つ永久的に治癒し得る。そしてこの場合隣接淋巴腺は侵されない.要言すれば,結核菌に對する個體の反應が健康天竺鼠と結核天竺鼠とで可成り違つて現はれることである。この現象は專ら生菌に限らず,死菌の場合でも,同様著明に起り得るものである。
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