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あとがき・次号予告
阿彦 忠之
pp.904
発行日 2011年11月15日
Published Date 2011/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102276
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本号の特集テーマを考え始めたのは4月中旬でした.大震災に伴う福島第一原発の事故について,まだ収束の見通しもない中で「放射線」を主題としてよいものか? 何度も悩みました.地震や津波による直接的被害については復旧段階に入っていたのに対して,原発事故による放射線災害はongoingの状態でしたので,特に地元の福島県の方々の心情を察すると,このテーマは時期尚早ではないかとも考えました.しかし,私自身も福島の隣県で放射線対策に追われる中,情報収集にはインターネットの大手検索サイトを利用しましたが,検索結果の上位に出てくる情報には偏りが大きく,信頼できない内容も多いことを痛感しました.放射線と正しく向き合うためには,信頼できる情報を幅広い視点から早めに紹介したほうがよいと考え,また,本号が出来上がる頃には安心できる状況が増えていることを祈りつつ,企画案を練ったところです.
放射線の健康影響については,子育て家庭の不安が特に強いので,山形では保育園等への出前講座に力を入れております.参加者の中には,インターネット等を通じた情報に基づく誤解からか,県による放射線測定結果や当日の説明資料に懐疑的な姿勢を示して,出前講座を混乱させる親も見られます.「私は信頼されていないな…」と血圧の上昇を感じながらも,そんな時は参加者から具体的な不安を聞き共感しながら,丁寧な説明を重ねることが大切であることを実感しています.本特集からも,目に見えない放射線と向き合うには,関係者間の信頼の構築が重要であることを再認識した次第です.
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