連載 路上の人々・8
かぁーちゃん!生きたばーいっ
宮下 忠子
pp.725
発行日 2010年8月15日
Published Date 2010/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101884
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真夏,焼け付くような太陽がゆっくりと沈みかけた夕暮れ時,隅田川はきらきらと輝きながら流れていく.歩道の片隅で野宿を続けている人たちがいる.「ヘルプ!」と叫べない路上生活者を巡回しながら探し,声を掛けるようになって,長い歳月が流れた.野垂れ死にをさせないための,ささやかな活動である.その日,土手の反対側に座り続けている高齢者が気になっていた.これまで目を合わせてもそらされてきた.その日は違った.おじさんが笑顔で挨拶を返してきたのだ.私はほっとしておじさんに近づいていった.
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