特集 検証「パンデミックインフルエンザ2009」
パンデミック(H1N1)2009―わが国の対策の総括と今後の課題
尾身 茂
1,2
,
岡部 信彦
2,3
,
河岡 義裕
2,4
,
川名 明彦
2,5
,
田代 眞人
2,6
1自治医科大学
2内閣官房新型インフルエンザ対策本部専門家諮問委員会
3国立感染症研究所感染症情報センター
4東京大学医科学研究所ウイルス感染分野
5防衛医科大学校内科学講座2感染症
6国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター
pp.636-646
発行日 2010年8月15日
Published Date 2010/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101864
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序論
WHOは昨(2009)年4月27日,新型インフルエンザの“人から人へ”の感染を認めフェーズ4を宣言.わが国でも翌28日に水際作戦が開始され,5月16日に国内発生第1例が発表された.感染が沈静化した今こそ,次回のパンデミックに備え,これまでの経験を評価・総括すべき時期である.
今回のわが国の新型インフルエンザ対策は,いわゆる“水際作戦”,学校閉鎖,医療供給体制,ワクチン,リスクコミュニケーション等の在り方について,国民的な議論・関心の対象になった.しかし,特に初期において,例えば,“水際作戦”がどのような背景および過程で実施されたか等,あまり一般には知られていなかった.私ども内閣官房に設置された新型インフルエンザ対策本部専門家諮問委員5人(以下,「専門家諮問委員」とする)は,“水際作戦”,学校閉鎖,医療供給体制などに関する政府の政策決定に一定程度関与したので,当時の私どもの考え・判断を記録として残すことがわれわれの責任と考え,本稿を執筆することにした.ほぼ同じ時期に厚生労働省主催で実施され,われわれ専門家委員も参加した“国としての総括”とともに,次回へのパンデミックの参考になればと考えている.
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