徹底分析シリーズ ファシアの科学—痛みの治療と手術における新たな視座
巻頭言
小幡 英章
1
1埼玉医科大学総合医療センター 麻酔科
pp.211
発行日 2026年3月1日
Published Date 2026/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.134088360330030211
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- 文献概要
ファシアは線維性結合組織の総称であり,筋・神経・血管・臓器を包み,全身を連続的につなぐ立体的網目状構造を形成している。しかし,その機能的意義については十分には解明されていない。近年,ファシアには自由神経終末が豊富に分布し,侵害受容や力学的ストレスの感知を担う「痛みのセンサー」として重要な役割を果たしていることが明らかになってきた。さらに,ファシアの硬化や癒着,滑走性の低下といった機能異常が,慢性痛の発症と遷延化に深く関与する可能性が示され,これを標的とした新たな治療戦略が注目されている。
特に日本で発展してきたエコーガイド下ファシアハイドロリリースは,異常なファシアを可視化しながら介入する低侵襲治療として,慢性痛や遷延性術後痛への応用も広がりつつある。また鏡視下手術や生体解剖学の進歩により,手術におけるファシアの認識そのものも大きく変わりつつある。さらに東洋医学における経穴・経絡の概念をファシアの連続性と結びつける試みは,痛みの理解に新たな視座をもたらしている。
本徹底分析シリーズでは,解剖学・生理学からペインクリニック,各診療科における手術手技まで,第一線で活躍されている先生方がファシアと痛み(急性痛,慢性痛,周術期の痛み)との関係を科学的に解説している。本企画が,ファシアを意識した痛み診療および手術の実践の契機となれば幸いである。
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