徹底分析シリーズ 麻酔科医・手術室スタッフの健康管理学—産業医学的ヘルスケア
巻頭言
豊田 浩作
1
,
喜多村 紘子
2,3
1島根大学医学部附属病院 麻酔科
2放射線医学研究所 放射線規制科学研究部
3産業医科大学 産業医実務研修センター
pp.587
発行日 2025年6月1日
Published Date 2025/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.134088360320060587
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- 文献概要
われわれの仕事は,患者さんの命と健康と安全を守ることです。これに異を唱える方はいないでしょう。では,そのために日々懸命に働くわれわれの命と健康と安全は,誰が守ってくれるのでしょうか?
誰も守ってはくれない。自分自身で守るしかない。
これが,多くの医療現場における現実です。医師の働き方改革が叫ばれ始めて久しいですが,手術を要する患者が減るわけではなく,この人手不足が解消するわけでもありません。われわれはこのしわ寄せを受け,蓄積し続ける疲れをごまかしながら,限られた時間と労力を絞り出しています。しかしそれも,いつか限界を迎えます。現に,心身が限界に達し憔悴しきって去っていった先輩や同僚を,われわれは今まで数多く見てきたではありませんか。
われわれはこの過酷な環境に慣れすぎてしまいました。そして,この環境を根本的に変えるのが容易なことではないならば,われわれは自身を守るために,障害を引き起こし得るリスクを最小化し,今あるリソースを最大限活用し,またあるときは事業場外資源も活用するなどして,この過酷な環境を生き抜く術を身につけていかなければなりません。
患者に向けている「命と健康と安全を守る」という使命のベクトルを,少しだけ,自分自身にも向けてみませんか。麻酔科医にはまだなじみの薄い産業医学の視点が,きっとその助けになります。
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