書評
医学研究のための因果推論レクチャー
東 尚弘
1
1東大大学院・公衆衛生学
pp.728-729
発行日 2025年8月20日
Published Date 2025/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.091434910970090728
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「可能性が示唆された」から脱却し,社会に適用可能な研究をめざすために
「相関は因果ではない」とは,観察研究において言い古された戒めである。初学者は研究結果の報告において「○○が△△に影響」とは表現しないようにいわれることも多い。そのため表現は「関連があった」でとどめ,考察でそれとなく影響を論ずるという奇妙なことが起こる。研究の限界で「観察されたのは相関であって,因果を表すとは限らない」とのざんげを入れておくことで,免罪符を得るのもお約束である。さらに謙譲の美徳を追求し,結論は「可能性がある」「示唆された」を重ねて「可能性が示唆された」と独特の文学がまん延する。
本書はこの前近代的なプラクティスを乗り越え,相関と因果の距離を縮めて,等身大の解釈を可能とするさまざまな手段を読者に提供するものである。一歩進んだ観察研究の考え方を知りたい,という人には最適の入門書といえる。

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