書評
—迷って選んでためらって—ケアするあなたの倫理学
佐々木 淳
1
1医療法人社団悠翔会
pp.882
発行日 2026年7月25日
Published Date 2026/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.055704330610070882
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そもそも医療に「倫理」が求められるなんて,病院で診療をしているときには実は考えたこともなかった.目の前の患者の症状や異常値の原因を診断する.診断がついたら治療する.ガイドラインに従って治療方針を選択し,説明し,同意書にサインをもらう.治療の結果を評価し,次の方針を選択する.これは必要に応じて繰り返され,ゴールに到達したら,あるいは到達できないことが判明したら,このサイクルは終了.患者は退院し,かかわりは終わる.このプロセスに倫理が挟まる余地はないと思っていた.治療するかしないかは確率で決まる.なんといっても医療は科学なのだから.ただ,そんな病院での診療に違和感があったのも事実だ.来る日も来る日もひたすらがん治療をしながら,最終的にその多くは亡くなっていく…….医療は患者を幸せにできないのではないか.
そんなジレンマを感じていたときに偶然出合ったのが在宅医療だった.患者の多くは病気や障害が治らない状態にある.人生の最終段階を生きている方も少なくない.それでもそれなりに幸せな生活を継続している人がいる.大切なのは病気が治せるか治せないか,よりも,自分が選択した人生を生きているかどうかなのだ,ということを学んだ.そのころ,本書の著者からルーカイザーのある詩を教えてもらう機会があった.

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