Japanese
English
特集 ライフサイクルからみた小児期の逆境体験(ACEs)および肯定的体験(PCEs)
ライフサイクルをまたぐ負の連鎖へのはたらきかけ—治療を通してみる本人支援の要点
Intervening in the Lifecycle Chain Through PCEs : Key Points for Supporting the Individual Through Specialized Treatment
八木 淳子
1,2
Junko Yagi
1,2
1岩手医科大学医学部神経精神科学講座
2岩手医科大学附属病院児童精神科
1Department of Neuropsychiatry, Iwate Medical University School of Medicine
2Department of Child and Adolescent Psychiatry, Iwate Medical University Hospital
キーワード:
肯定的な小児期体験
,
positive childhood experiences
,
PCEs
,
認識的信頼
,
epistemic trust
,
アタッチメント
,
attachment
,
内的作業モデル
,
internal working model
Keyword:
肯定的な小児期体験
,
positive childhood experiences
,
PCEs
,
認識的信頼
,
epistemic trust
,
アタッチメント
,
attachment
,
内的作業モデル
,
internal working model
pp.305-310
発行日 2026年3月15日
Published Date 2026/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.048812810680030305
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
抄録
小児期の逆境体験(adverse childhood experiences:ACEs)は,発達の各段階において情動調整や対人関係様式に持続的な影響を及ぼし,不利な発達の連鎖を形成しうる。一方,近年注目される肯定的な小児期体験[positive childhood experience(s):PCE(s)]は,ACEsの影響を緩衝する要因として報告されてきたが,その作用機序や本人支援への具体的な活用は十分に論じられていない。本稿では,PCEsを単なる保護因子としてではなく,本人の内的世界に内在化され,発達の軌跡や将来の治療反応性に影響を及ぼすリソースとして捉え直す。文献的検討と16歳青年の架空症例を通じ,幼少期のPCEsがアタッチメント基盤や認識的信頼の形成に寄与し,治療準備性や治療窓(治療可能域)の幅を拡張することで,メンタライゼーションに基づく治療(MBT-A)やトラウマフォーカスト認知行動療法(TF-CBT)などの専門療法の有効性を支えうることを示す。さらに,治療関係そのものが新たなPCEとして内在化され,回復後の成長を支える内的資源となりうる点を論じ,治療技法を超えた普遍的な本人中心支援の意義を考察した。

Copyright © 2026, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.

