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はじめに
大動脈解離(aortic dissection)は“大動脈壁が中膜のレベルで2層に剝離し,大動脈の走行に沿ってある長さを持ち2腔になった”状態と定義されている1)(図1).剝離の長さについて明確な定義はないが,少なくとも1〜2cm以上ないと画像診断で明瞭な描出は困難とされている.頸動脈解離が起こる原因は医原性,外傷性,大動脈解離からの波及,突発性に分類される.なかでも急性胸部大動脈解離(Stanford A型)からの波及で総頸動脈解離を生じることが比較的多く,総頸動脈解離の41%が大動脈解離からの波及に起因し2),右側優位である.一方,総頸動脈のみに解離を生じる特発性総頸動脈解離はまれで,特に邦人における発症頻度は極めて低い.
大動脈解離Stanford A型は極めて予後不良な疾患であることが知られており,発症後に致死率が1時間当たり1〜2%上昇すると報告されている3).さらに,意識障害や片麻痺などの神経学的徴候が持続し,かつ大動脈解離の循環が不安定な症例では院内死亡率が36.2〜55.9%と極めて高いが4),Gaulら5)は,大動脈解離Standford A型で,意識障害や麻痺,感覚障害など脳,脊髄,末梢神経の虚血性の神経症候を呈した症例は約3割であったと報告している.
脳虚血症状が起こる原因として,弓部分枝の解離によるmalperfusion(分枝血流障害),弓部分枝解離部遠位側の血栓塞栓症,低血圧(心筋虚血や心タンポナーデまたは大量出血による全身の循環不全),脳神経の機械的圧迫,などが挙げられている1).なかでも腕頭動脈や左総頸動脈の解離で末梢側にre-entryがないために偽腔が拡大して真腔狭窄を来すものが脳虚血を起こすメカニズムとして最も多い6).
頸部領域における超音波検査のパニック所見に含まれているのは脳梗塞急性期や神経症状出現時の大動脈から波及した頸動脈解離となる7).また,脳卒中の診療時に遺伝子組換え組織型プラスミノゲン・アクティベータ(recombinant tissue-type plasminogen activator:rt-PA.アルテプラーゼ)静注療法を行う際,禁忌疾患である急性大動脈解離を除外することも非常に重要となる.このように動脈解離などの血管壁に異常を来す疾患に対して,脈管内の情報が得られる頸動脈超音波検査は非常に有用である.

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