FOCUS
医療DXとは何か—外科医の視点から
高橋 泰
1
Tai TAKAHASHI
1
1国際医療福祉大学大学院
pp.1372-1376
発行日 2025年11月20日
Published Date 2025/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.038698570800121372
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はじめに
2025年6月に発表された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版(以下,グランドデザイン2025)」と「経済財政運営と改革の基本方針2025(以下,骨太の方針2025)」は,医療デジタル・トランスフォーメーション(DX)の進め方を根本から更新した.最大の転換点は,電子カルテをクラウドネイティブ化する方針が国家レベルで明確化されたことである.これは「院内サーバーを外(クラウド上)に移すだけ」ではなく,設計思想そのものを見直し,クラウドの特性(拡張性・柔軟性・安全性)を最初から引き出せる形に作り直すことを意味する.
医療DXの本質は,院内システムをインターネットにつなぐことではない.情報の生成・共有・活用の仕組みを刷新し,現場の意思決定と業務プロセスを高度化する点にある.外科領域では,CT/MRIなどの高精細画像や術中モニタリングをAIが解析し,術前の見立てから術中ナビゲーション,術後の合併症予測とフォローまで一気通貫で支援できる.従来は紙や院内サーバーから断片的に情報を集めていたが,クラウドネイティブ型の電子カルテと連携すれば,必要なデータにワンクリックで到達し,多職種で同じ画面を見ながら迅速に決められる.
本稿では,方針転換の背景と意義を整理しつつ,外科医の視点からクラウドネイティブ電子カルテの実像と効果,移行の必然性,普及ロードマップ,実装時の留意点まで掘り下げる.

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