増刊号 周術期管理マニュアル—保存版
Ⅳ術後合併症とその管理
精神・神経系
せん妄
宮島 美穂
1,2
,
藤本 侑花
1,2
,
竹内 崇
1,2
Miho MIYAJIMA
1,2
1東京科学大学病院精神科
2東京科学大学病院心身医療科
pp.261-264
発行日 2025年10月22日
Published Date 2025/10/22
DOI https://doi.org/10.11477/mf.038698570800110261
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せん妄は,身体疾患や薬剤,手術などにより生じる急性の意識障害であり,注意・認知の障害を特徴とする.術後せん妄は特に高齢者で多く11〜51%に生じる1).術後せん妄は,点滴・ドレーンの自己抜去,転倒・転落,医療スタッフへの暴力などの医療安全上の問題や,術後合併症の増加,入院期間の延長,医療費の増加などの短期的なデメリットに加え,術後認知機能障害(post operative cognitive dysfunction:POCD)との関連,1年後の死亡率上昇など長期的な予後も悪化させるため,適切な対応が欠かせない.
術後せん妄対策においては,術前からの予防と,早期発見・早期介入が重要である(図1)2〜5).せん妄の三因子として,①リスク素因である準備因子,②せん妄の引き金となる直接因子,③せん妄の誘発や悪化,遷延に関わる促進因子があり,各因子が重畳するほど発症・悪化しやすくなる.手術が直接因子となる術後せん妄においては,準備因子を術前に評価し,促進因子を可能な限り減らすことが,基本的な対策となる.

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