増刊号 周術期管理マニュアル—保存版
Ⅱ併存症をもつ患者の評価とその術前・術後管理
腎疾患
透析患者
中根 慶太
1
,
富岡 奨幸
1
,
谷口 友規
1
,
川瀬 紘太
1
,
飯沼 光司
1
,
古家 琢也
1
Keita NAKANE
1
1岐阜大学大学院医学系研究科生体管理医学講座泌尿器科学分野
pp.65-66
発行日 2025年10月22日
Published Date 2025/10/22
DOI https://doi.org/10.11477/mf.038698570800110065
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術前評価(専門医にコンサルトすべき病態・検査値)
透析患者の周術期管理には,患者の透析歴,透析条件,バスキュラーアクセス(BA)の状況,慢性的な貧血や高血圧の治療状況,現在の心機能,糖尿病などの腎不全の原因となった併存症の治療状況などを把握して対処する必要がある.術前評価で確認すべき主たる項目を表1に示す.
術前にCTやMRI,特に造影剤を用いた画像評価を行う場合,MRIでは,使用するガドリニウム造影剤による腎性全身性線維症(nephrogenic systemic fibrosis:NSF)の発症リスクが高くなるため,原則投与しない.また,すでに透析導入後で自尿の量も少ない患者では,ヨード造影剤を投与しても患者に対する影響は大きくない.血液透析ではヨード造影剤の透析性は高く,造影剤の投与量が200mLを超え,嘔気・嘔吐や心不全症状などの副作用が出現するようなことがなければ,定期透析に臨時の透析を追加する必要性は少ないとされている.一方,腹膜透析(peritoneal dialysis:PD)でも造影剤は透析されるが,血液透析よりは時間を要すると考えられている1).血液透析導入から短期間であったり,PD患者で自尿量がある程度出ている患者では,造影剤投与により残腎機能が悪化する可能性があるため,ヨード造影剤の投与については慎重に判断する.
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