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術前評価(専門医にコンサルトすべき病態・検査値)
本項では,透析導入前の慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)患者の管理について解説する.CKD患者のステージは推算糸球体濾過量(eGFR)と尿蛋白の有無で決定されるが,本項ではeGFR 60未満のCKD患者を対象とする.CKDが生体システムに与える影響とその対策を表1に示す.腎不全患者の術前評価では,一般的な日常生活動作(ADL),認知機能,循環,呼吸機能,肝機能,凝固機能などに,低腎機能が及ぼす影響を考慮し,対策を考える必要がある.CKD患者では,残腎機能の温存は重要であるため,腎臓内科受診歴のない患者においては,周術期のみならず,今後の腎機能温存に関する指導も含めて腎臓内科コンサルトを考慮する.また,そもそもCKDの原因となる高血圧や糖尿病,膠原病などの疾患を有し,かつ未治療の場合は各関連科にコンサルトしておく.
術前にCTやMRI,特に造影剤を用いた画像評価を行う場合には,ヨード造影剤による造影剤腎症(contrast-induced nephropathy:CIN),ガドリニウム造影剤による腎性全身性線維症(nephrogenic systemic fibrosis:NSF)に注意が必要である.本邦のヨード造影剤使用に関するガイドラインでは,経動脈造影剤投与の場合はeGFR<60 mL/分/1.73m2,経静脈造影剤投与の場合はeGFR<30 mL/分/1.73m2がCIN発症のリスクファクターであり,予防策を講ずることを推奨している.CINの発症予防には,生理食塩水などの等張輸液が有効とされている.ガドリニウム造影剤によるNSFは非常に稀であるが,eGFR<30 mL/分/1.73m2の患者では発生する可能性があるため,原則としてガドリニウム造影剤は使用しない.以下にCIN予防のための処方例を示す.

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