連載 医療機関で起きる法的トラブルへの対処法・55
患者の身元保証人の取り扱いと,身寄りのない患者への対応
長谷川 葵
1
1弁護士法人 色川法律事務所
pp.888-892
発行日 2025年11月1日
Published Date 2025/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.038523770840110888
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■1 身元保証について
病院が患者の入院を受け入れるに当たり,入院費用などの支払いの履行を確保したり,退院時や緊急時に連絡して協力・対応を求めるために,身元保証人や身元引受人などとして,患者の家族や親族など患者本人以外の方から署名をもらったり,連絡先を申告してもらうことが実務上行われています★1.
一口に身元保証・身元引受(以下,「身元保証」として統一します)といっても,その内容はさまざまです.例えば,入院の申込書に身元保証人,連帯保証人★2の役割が記載された上でそれぞれの署名欄が設けられている場合もあれば,身元保証と連帯保証との区別はなく,署名者が負う役割(例えば,入院費の支払い,身元の一切を引き受けること,緊急連絡先となることなど)を箇条書きで列挙している例,特段そのような役割の記載もなく単に身元保証の署名を求めている例などもあると思われます.このように,書面の内容,形式も病院によってさまざまですので,身元保証人に対して何を求めることができるのかについては,当該書面の記載などを基に個別に解釈する必要があります.具体的に身元保証人の役割が記載されていればその内容に従うことになりますが,特にそのような記載がない場合には,身元保証は法律上の用語でもないため★3,一般的な役割から解釈せざるを得ません.

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